「二桁同士の掛け算を暗算するなんて、特別な暗記力がある人だけの特技では?」と思われがちですが、それは大きな誤解です。筆算なしで瞬時に解ける人が行っているのは、力ずくの計算ではなく「計算しやすい形に分解・変形する工夫」です。
学校教育で習う標準的な筆算は、位ごとに「一の位×一の位」「一の位×十の位」と細かく分割して紙にメモしながら足し合わせる手順を取ります。この方法は確実である反面、脳内だけで行おうとすると「途中の計算結果を記憶しておくワーキングメモリ」に過度な負荷がかかり、途中で数字を見失ってしまいます。
一方、いわゆる「計算の裏ワザ」や「インド式計算法」は、代数的な公式(分配法則や因数分解の公式)や面積図の考え方を視覚的・構造的に応用しています。たとえば、$(10a + b)(10a + c) = 100a(a + 1) + bc$ (ただし $b + c = 10$)という関係性を利用すれば、掛け算を「簡単な掛け算2回と数字の並べ替え」だけに変換できます。脳のメモリ消費を最小限に抑える仕組みこそが、驚異的な計算スピードの正体です。