世間一般において「ドドンパの事故」と聞くと、「コースのレールにひびが入った」「ブレーキが故障した」「車両の安全バーが外れた」といったマシントラブルを想起する人が少なくありません。しかし、国土交通省の事故調査報告や発表資料を精査すると、事故の本質はマシンの機械的故障ではなく、人体にかかる力学的負荷と搭乗姿勢のミスマッチにあったことが判明しています。
いわゆるドドンパ 骨折事故 理由の核心は、「頚椎(首)および胸椎(背骨)の圧迫骨折」です。2020年12月から2021年8月にかけて、男女複数の乗客が全治1〜3ヶ月に及ぶ骨折などの重傷を負う事態が発生しました。この調査において浮き彫りになったメカニズムは以下の通りです。
時速180kmへ1.56秒で加速する際、乗客の身体には強烈な後方への水平Gがかかります。このとき、頭部をヘッドレストに完全に密着させず、恐怖心から前屈みになったり、首を横や前に傾けたりしていた場合、重たい頭部(成人で約5kg)の慣性力が頚椎・胸椎にテコの原理のように極端な曲げモーメントとして集中します。その結果、背骨の椎体が耐荷重限界を超え、押し潰される形で圧迫骨折を引き起こしたのです。
「しっかり頭をつけていれば防げたのではないか」という議論も一部にありました。しかし、調査が進むにつれ、そもそも「1.56秒で3.75G」という極限環境下において、すべての一般利用客に対して完璧な乗車姿勢を物理的に強要・保持させること自体が設計思想として困難であったという構造的欠陥が指摘されるに至りました。人間工学的な許容度を超えた加速性能そのものが、内在的なリスクを抱えていたと言わざるを得ません。