ファムファタールの原義は、フランス語の「femme fatale」に由来します。「femme」は女性を指し、「fatale」は「運命の」「致命的な」「破滅をもたらす」という意味を持つ形容詞です。英語圏でもそのまま借用語として広く定着しており、日本語では一般に「運命の女」あるいは「破滅をもたらす悪女」と訳されます。
日本語で「運命の女」と聞くと、多くの人は「生涯を共にする理想的なパートナー」や「ロマンチックな結ばれ方をする相手」を想像するかもしれません。しかし、ラテン語の「fatum(運命・神託・死の定め)」に根幹を持つ西洋の概念において、「宿命(fatality)」とは人間の意志を超えた抗えない力であり、しばしば死や不可避の破滅を伴う悲劇的なニュアンスを含んでいます。つまり、ファムファタールとは「出会ってしまったこと自体が逃れられない宿命であり、その先には破滅が約束されている女性」を指す言葉なのです。
この言葉が文化的なキーワードとして花開いたのは、19世紀末の象徴主義やデカダンス(退廃主義)文学の時代でした。急激な産業革命と近代化の中で、従来の男性優位社会に対する無意識の恐怖や、抑圧された性愛のタブーが結晶化し、「美しくも恐ろしい女性像」として芸術家たちを熱狂させた歴史的背景があります。