「その封筒は見なかったことにする」。机の引き出しに突き返される、目の前で破り捨てられる。労務管理・労働法務の現場において、前時代的な暴挙は依然として散見される。
日本労働弁護団の相談現場でも、退職の意思を伝えた途端に損害賠償をちらつかされたり、パワハラを加速させられたりする過酷な事例が後を絶たない。当然ながら、退職届の「受取拒否」に法的な正当性は一切存在しない。民法上、意思表示は相手方に到達した時点で効力を発揮するため、相手が読んだかどうか、受け取りを認めたかどうかは問題にならないからだ。
現場で揉め事が泥沼化しそうな気配を察知したなら、証拠を残す作業へと即座に切り替える必要がある。配達証明付きの内容証明郵便で人事部宛てに直接送付する、あるいはやり取りの録音やメールの送信履歴を保全する。社会保険労務士などの専門家も口を揃える通り、感情論でぶつかり合うのではなく、客観的な事実の記録で包囲網を築くのが最も賢明な防衛策となる。