田島家養蚕展示館で展示パネルを精読した後に実物の田島弥平旧宅(主屋)を眺めると、その養蚕農家建築構造の機能美に息を呑むはずです。文久3年(1863年)に建てられた主屋は、間口約25メートル、奥行き約9メートルの瓦葺き総2階建てという圧倒的なスケールを誇ります。
構造上の決定的な特徴は、大屋根の上に突き出た細長い「越屋根(やぐら)」です。これは、1階や2階の障子・窓から取り入れた清涼な外気を室内に対流させ、蚕が発生させる熱気や湿気を屋根上部から効率的に排出する煙突効果を狙ったものです。この換気構造を備えた建築様式は「島村式蚕室」と呼ばれ、明治以降、日本全国の養蚕農家建築のスタンダードとして急速に普及しました。
弥平は1879(明治12)年および1880(明治13)年に、自ら蚕種を携えてイタリアへ直輸出を敢行しました。仲買人に依存せず国際市場へ果敢に挑んだ企業家精神の源流が、まさにこの島村の蚕室建築と展示館に凝縮されています。