世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は、長崎県と熊本県にまたがる12の構成資産で成り立っています。それぞれの集落は、地理的条件に応じて異なる信仰の形態を発展させました。
熊本県天草市に位置する﨑津集落は、漁村特有の信仰を守った場所です。信徒たちはアワビやタイラギといった貝殻の内側にある斑紋を聖母マリアに見立てて祈りを捧げました。現在は穏やかな羊角湾を望む場所にゴシック様式の﨑津教会が建ち、和の漁村風景と調和した美しい景観を見せています。
長崎市北西部の外海の出津集落は、険しい山肌の斜面に開かれた集落です。明治期に着任したフランス人のド・ロ神父は、信仰の復活とともに貧民救済や医療・教育、農地の開墾やそうめん製造などの産業育成に尽力しました。石積みの出津教会堂や旧出津救助院には、今も神父の精神が色濃く残っています。
九十九島の沖合に浮かぶ黒島の集落は、平戸藩の牧場跡地を開墾するために移住した潜伏キリシタンの島です。島民の多くがカトリックへと復帰し、島で産出された御影石や40万個以上のレンガを使って建設された黒島天主堂は、離島の地に築かれた信仰の記念碑として圧倒的な存在感を誇ります。
平戸島西岸の春日集落では、古くから神体山として崇敬されていた「安満岳(やすまんだけ)」を聖地として受け入れました。山岳信仰とキリスト教信仰が重なり合った美しい棚田の風景は、潜伏キリシタンと自然との深い関わりを今に伝えています。