冷徹さと人間味が交錯する世界観で世界的な大ヒットを記録した『地獄楽』。市川蒼が演じた山田浅エモン付知は、知識欲と狂気が同居する複雑極まりないキャラクターだった。単なる奇人として描くのではなく、彼がなぜ解剖に執着し、死と対峙するのか。市川はそのバックボーンを台本余白にギッシリと書き込み、アフレコ現場に臨んでいたという。
一方、弓道に青春を捧げる高校生たちの繊細な内心を描いた『ツルネ -風舞高校弓道部-』の竹早静弥役では、まったく異なるアプローチを見せた。ツルネ(弦音)の響きとともに揺れ動く少年の葛藤。声を大きく張るのではなく、吐息のスピードや滑舌の抑揚だけで焦燥感や友情の深さを表現する。こうしたジャンルごとの切り替え能力こそ、彼が『地獄楽』のようなダークファンタジーから『ツルネ』のような青春スポーツ作品まで幅広く起用される最大の理由だ。