本作が多くの読者や視聴者を惹きつけてやまない理由は、連作短編として積み重ねられる人間ドラマの切実さにある。多聞が出会う人々は、誰もが人生に行き詰まり、心に深い傷を負っている。職を失った外国人労働者、家庭崩壊の危機に瀕した男、生きる意味を見失った猟師。彼らは多聞の無垢な瞳に己の弱さを見つめ直し、わずかな再生の足がかりを得ていく。
犬は何も語らない。ただ寄り添い、じっと南を見つめ、時が来れば去っていく。その無言のコミュニケーションこそが、言葉に依存しすぎた人間たちの孤独を救っていく過程は、冷え切った現代社会に対する強烈なアンチテーゼとして機能している。