名門に生まれた章男氏だが、その歩みは決して平坦なものではなかった。慶應義塾大学を卒業後、アメリカの大学院を経て米国投資銀行に勤務。トヨタ入社後も「社長の息子」としての特別扱いを拒み、平社員として現場の泥にまみれる泥臭い叩き上げの道を歩んだ。
マスタードライバー「モリゾウ」としての顔を持つ章男氏の真骨頂は、サーキットで自らハンドルを握り、極限状態でのクルマの挙動を体感することにある。リーマンショック直後の社長就任、米国での公聴会、大規模リコール問題——絶体絶命の危機を救ったのは、家柄という威光ではなく、自らが現場で磨き上げた圧倒的な熱量と「現場第一主義」だった。