役所広司の名を一躍お茶の間に轟かせた決定打が、1983年のNHK大河ドラマ『徳川家康』における織田信長役だ。当時27歳。無名に近かった若手俳優の大抜擢は、放送開始とともに列島へ鮮烈な衝撃を与えた。
長身に映える甲冑姿、野性と知性が同居した鋭い眼差し。従来のステレオタイプな暴君像を塗り替え、どこか孤独と狂気を孕んだ若き信長は、視聴者を瞬く間に虜にした。「あの信長を演じている美男子は誰だ」とテレビ局に問い合わせが殺到したという逸話は有名だ。主演級のベテラン俳優たちが居並ぶ中、圧倒的な熱量で本能寺の変を駆け抜けた彼の姿は、今見返しても背筋が凍るほどの迫力と神がかった色気を放っている。