カメは弱みを見せない生き物だ。捕食者から身を守る進化の過程で、体調不良を極限まで隠蔽する習性を身につけた。それゆえ、飼育者が「何かがおかしい」と気づいたときには、すでに手遅れに近い重篤な状態に陥っているケースが後を絶たない。近年の爬虫類獣医学の進歩は目覚ましく、CTスキャンや微量血液検査による早期診断が可能になったが、獣医師の元へ連れて行く判断は日々の観察眼にかかっている。
見逃してはならない初期兆候は以下の通りだ。 ・水面に浮かんだまま潜れない、または体が片側に傾いて泳ぐ(初期の肺炎や呼吸器感染症) ・鼻先に微細な泡がつく、開口呼吸や「ヒュー」という呼吸音が漏れる ・甲羅の一部の色が抜け、触ると弾力がある、あるいは嫌な臭いがする(甲羅腐敗病/シェルロット) ・日光浴の頻度が異常に増える、あるいはシェルターから全く出てこない ・目が腫れぼったく開かない(ビタミンA欠乏症または重度の水質悪化) こうした微小な違和感に気づき、即座に保温強化と専門医の受診に踏み切れるかどうかが、生死の境界線を分ける。