黒船来航に揺れた伊豆半島(静岡県下田市)は、近代日本の夜明けを告げる舞台として名高い。近隣の宝福寺では勝海舟が土佐藩主・山内容堂に謁見し、土佐を脱藩した風雲児・坂本龍馬の脱藩罪免除を勝ち取った逸話が語り継がれているが、その時代、下田八幡神社の一帯もまた幕末の志士や町役人たちが行き交う情報の交差点であった。
当時の下田は、突如として異国の文化と対峙することになった最前線。不穏な世情の中で町民たちが武運や平穏を祈り、互いの絆を確かめ合った場所こそがこの神社だったのだ。これまでNHK大河ドラマ(幕末・歴史紀行シリーズ)などでも幾度となく取り上げられてきた下田の幕末群像劇。その背景には、常に町民の精神的支柱として揺るぎなく鎮座していた鎮守の森の存在があった。