空気が張り詰めていた。2016年日本シリーズ、広島東洋カープとの死闘。敵地マツダスタジアムで連敗を喫し、崖っぷちに立たされた北海道日本ハムファイターズを救ったのは、当時まだ22歳だった大谷翔平の一振りだった。
第3戦、延長10回裏。二死二塁の場面で打席に入った大谷は、内角低めの変化球を技ありの一撃でライト前へ運んだ。劇的なサヨナラ安打。球場全体の空気が一瞬で入れ替わった瞬間だった。プロ野球の長い歴史の中でも、あそこまで一人の選手が放つ気迫によってシリーズの流れが180度変わった事例は極めて稀だ。
マウンドでの圧倒的な存在感、そして走者としての爆発的なスピード。相手指揮官に「大谷シフト」を余儀なくさせ、グラウンド上の全選手を翻弄した。走攻守すべてにおいてゲームを支配する姿は、まさに新時代の怪物の誕生を告げていた。