「スラッシャー映画」の歴史において、キャラクターのビジュアルが作品全体の運命を決定づけるケースは少なくない。1980年代のホラー映画ブームを牽引した『13日の金曜日』シリーズも、まさにその好例だ。しかし意外なことに、シリーズ第1作目のスクリーンのどこを探しても、あの有名な白い仮面は登場しない。
当時の怪獣や怪人は、精巧な特殊メイクやラバーマスクで表現するのが常識だった。しかし、感情を一切排した無機質なプラスチックの顔面がスクリーンに映し出された瞬間、観客が覚えたのはこれまでにない冷ややかな恐怖だった。人間の表情を完全に遮断するデザインが、図らずも不気味の谷を軽々と飛び越え、世界中の恐怖を惹きつけるアイコンとなったのだ。