出血を「着床出血だろう」と楽観視することには、重大な医学的リスクが潜んでいます。妊娠初期の出血の中には、一刻を争う処置が必要な疾患のSOSサインが含まれているからです。
代表的なリスクの筆頭が切迫流産(せっぱくりゅうざん)の兆候です。胎盤が完成する前の妊娠初期は、絨毛組織が子宮内膜へ根を張る過程で出血を起こしやすく、絨毛膜下血腫を形成することがあります。出血が少量かつ一時的であれば安静によって継続できるケースも多いですが、妊娠初期の出血が鮮血であり、生理2日目を超えるような量に達している場合や、進行性のお腹の張り・陣痛のような周期的腹痛を伴う場合は、胎嚢が排出されかけている危険性があります。
さらに警戒すべきは、受精卵が卵管など子宮腔以外に着床してしまう子宮外妊娠(異所性妊娠)の症状です。全妊娠の約1〜2%に発生するとされ、放置すると妊娠6〜8週頃に卵管が破裂し、腹腔内大量出血による母体の出血性ショック死を招く極めて危険な状態に陥ります。特徴的な兆候としては、生理予定日前後からの断続的な茶褐色のおりもの、下腹部の片側だけを刺すような激痛、冷や汗、急激な血圧低下などが挙げられます。「生理が軽く来ただけ」と自己判断して放置することが、生命に関わる事態を招きかねないのです。