世界的なアニメーション監督である宮崎駿が生み出した名作『千と千尋の神隠し』。劇中で主人公の千尋とリンが、静まり返った海原を木桶の舟で滑るように進む幻想的なシーンを覚えている人は多いはずだ。スタジオジブリが公式に特定地と明言しているわけではないものの、あのどこか懐かしく、水と舟の境界が溶け合う情景は、まさにここ佐渡の海そのものである。
近年、Netflixをはじめとする国際的な配信プラットフォームで日本の地方文化を追うトラベル・ドキュメンタリーが配信されたことで、この風景は海を越えて再発見された。画面越しに見た神秘的な海を自らの目で確かめようと、欧米やアジア各国からの旅行者がひっきりなしに港を訪れている。言葉は通じなくとも、船頭が操る一本櫂のリズムと笑い声が、国境を軽々と溶かしていく。