彼女のフィルモグラフィを語る上で、2014年の名作サスペンスドラマ『Nのために』を外すことはできない。過酷な運命に翻弄されながらも前を向く主人公・杉下希美役は、榮倉奈々のキャリアにおける最高到達点のひとつと称される。繊細な心の揺らぎを瞳の光だけで表現する静謐な芝居は、批評家からも絶賛を浴びた。
そしてこの現場は、彼女の人生にとっても決定的な節目となる。共演した俳優・賀来賢人との出会いだ。作中で見せた切なくも美しい共鳴は、やがて現実の愛へと結実し、二人は結婚。私生活で母となり、人間としての深みを増したことが、その後の演技にさらなる奥行きと説得力を与えている。運命の歯車がカチリと噛み合った瞬間が、まさにあの作品にあった。