なぜ、これほどまでに人々はこの店の肉に惹きつけられるのか。その核心は、徹底した素材選びと門外不出の調理プロセスにある。使用されるのは、全国から選び抜かれた最高級の黒毛和牛。産地や銘柄という記号だけに頼るのではなく、肉のサシの入り方、赤身のキメ細やかさ、脂の融点を職人の確かな目で見極めている。
圧巻なのはその火入れだ。一般的なオーブン調理とは一線を画し、肉の内部温度を秒単位でコントロールしながらじっくりと熱を通していく。肉汁を閉じ込め、繊維を壊さずに仕上げられたローストビーフは、中心部が美しいロゼ色に染まる。ワゴンサービスで客の目の前で一枚ずつ豪快にカッティングされる際、刃先から溢れ出る芳醇な肉汁と立ち上る湯気が、肉の鮮烈なポテンシャルを物語る。口に含めば、噛む必要すらないほどの柔らかさと、力強い旨味が広がる。