カバー曲としての「駅」の最大の醍醐味は、歌い手の性別やバックグラウンドによって主人公の心理描写がまったく異なる表情を見せる点にあります。
なかでも徳永英明のカバーは、女性視点の歌詞を男性歌手が歌うことで生じる特有の儚さと脆さを引き出した代表格です。徳永のハスキーで透明感のあるハイトーンは、見送る側の女性の切なさをなぞりつつも、どこか「見送られた側の男性の後悔」をも想起させる多層的な響きを放っています。
一方、JUJUのカバーは、現代の働く女性が抱くリアリティに根ざしています。山下達郎版のシンフォニックな大作感とは対照的に、よりプライベートで都会的なアコースティックサウンドを基調とし、深夜の帰路にひとりで回想するような静謐な質感を生み出しています。
さらに、テレサ・テンや森山良子、岩崎宏美といった歴代屈指のボーカリストたちもそれぞれの解釈で本曲を取り上げており、メロディラインの美しさと歌詞の普遍性が、いかなるアレンジにも耐えうる強固な骨格を持っていることを証明しています。