大門未知子の代名詞である「私、失敗しないので」というフレーズ。この名台詞が生まれた背景には、医療とはまったく別のフィールドで起きたドラマがありました。脚本家の中園ミホ氏が明かしたところによると、この言葉の生みの親は、2012年ロンドン五輪の柔道女子57キロ級で金メダルを獲得した松本薫選手です。
当時、世界の大舞台で闘志を剥き出しにし「野獣」と称された松本選手が、試合後のインタビューで「ミスはしないのか?」と問われた際、鋭い眼光で言い放った言葉から着想を得たと中園氏は回顧しています。並外れたプレッシャーを背負いながら、自らを極限まで追い込んで「絶対に失敗しない」と信じ切るプロアスリートの覚悟。これを、他人の命を預かる孤高の外科医に背負わせることで、日本のドラマ史に残る強烈なキャラクターが完成しました。
また、大門未知子が「キューバで医師免許を取得した」という特異な設定も、綿密な取材背景に基づいています。キューバは世界屈指の医療先進国であり、国民皆保険や予防医学の徹底、さらには世界各国へ医療チームを派遣する人道支援で国際的に高く評価されています。日本のような硬直化した医局制度の枠外に身を置き、世界中の過酷な現場で修羅場をくぐり抜けてきた未知子のタフネスを表現するための設定として、キューバという地が選ばれました。