シャーメゾンの代名詞とも言えるのが、積水ハウスが開発した高遮音床システム「シャイド55(SHAIDD55)」、さらには上位グレードの「シャイド50」です。従来の一般的な賃貸アパート(軽量鉄骨造)に比べ、上階からの衝撃音を約2分の1に低減させると謳われており、技術的には極めて優れた防音性能を誇ります。ではなぜ、「足音が響いて眠れない」といったトラブルが後を絶たないのでしょうか。
建築音響工学の専門家が指摘する決定的な理由は、音の種類による伝播特性の違いです。建築物における床衝撃音には、以下の2系統が存在します。
- 軽量床衝撃音(LL値):スプーンや硬貨を落としたとき、スリッパでパタパタ歩いたときのような比較的高音域の「乾いた音」。
- 重量床衝撃音(LH値):大人が踵からドスドスと踏み込んだ歩行音や、子どもがソファから飛び降りたときに発生する低音域の「鈍い振動音」。
シャイド55は特殊な高比重遮音マットと防振ゴム、ALC板などを組み合わせることで、軽量床衝撃音に対しては劇的な低減効果を発揮します。しかし、質量そのものが振動する重量床衝撃音に関しては、いくら床材を進化させても、構造躯体が軽量鉄骨である以上、物理的な限界が存在します。分譲マンションのような厚さ200mm以上の鉄筋コンクリート(RC)スラブであっても完全に消すことが難しい重量衝撃音が、鉄骨造のアパートで皆無になることはあり得ません。
「シャーメゾン=無音空間」という誤った思い込みを抱いたまま入居すると、日常的な生活音すら耐えがたいストレスとして認識され、隣人トラブルへと発展する構造的な落とし穴が生じるのです。