蒙武という武将を語る上で欠かせないのが、一族をめぐる血統と家族関係です。父・蒙驁(もうごう)は斉から流れて秦の白老将軍として親しまれた温厚な名将であり、蒙武の長男は変幻自在の戦術眼を持つ蒙恬、次男は軍師として中枢を担う蒙毅(もうき)です。まさに秦国屈指の名門軍事一族を形成しています。
家庭内における蒙武は、絵に描いたような「不器用な武人の父」です。蒙恬に対して面と向かって愛情や称賛を伝えることは滅多にありません。しかし合従軍編において、汗明の凶刃によって蒙恬が深手を負わされた際、蒙武が見せた怒りの爆発は、何よりも雄弁に息子の存在の大きさを証明していました。普段は感情を表に出さない巨漢が、血の繋がりに突き動かされて限界を超えた力を見せる場面は、作中屈指の熱い親子描写として支持されています。
なお、読者の間で時折話題に上る「蒙武の嫁(妻)」については、史実にも『キングダム』本編にも詳細な名前や出自は描かれていません。しかし、卓越した武勇を誇る蒙武と、眉目秀麗で柔軟な知略を併せ持つ蒙恬・蒙毅の個性の違いを鑑みると、母方にも高潔で教養深い家柄の女性が存在したことが推察されます。蒙家は蒙驁から蒙武、そして蒙恬へと三代にわたり秦王家に忠誠を尽くし続けた稀有な一族であり、その絆は戦国の厳しさを乗り越える強力な支柱となっていました。