国民的アニメとしての歴史を誇る『ドラえもん』だが、野比玉子の声を担当した歴代声優は、長い歴史の中でわずか3名しか存在しない。その変遷を一覧化すると、日本アニメ史の進化と声優界の世代交代のダイナミズムが如実に浮かび上がってくる。
歴代の変遷において最大の驚きは、1973年の日本テレビ版で小原乃梨子が野比玉子を演じていた事実だろう。小原といえば、1979年からテレビ朝日版で主人公・野比のび太役を26年間にわたって演じ続け、国民の少年像を形作った至宝である。2024年に惜しまれつつこの世を去った小原だが、日テレ版でのママ役を経てテレ朝版の息子役へとスライドした経緯は、アニメ史を語る上で欠かせない伝説的なエピソードだ。
そして1979年から26年間にわたりテレビ朝日版の初代ママを務めたのが千々松幸子である。『ど根性ガエル』のピョン吉や『魔女っ子メグちゃん』の神崎メグなど、数々の主役を演じてきた千々松は、甲高い声と鋭い語気で「日本の典型的なお母さん」を見事に具現化した。あの特徴的な「の〜び〜太!」という呼び声は、当時の子どもたちにとって宿題を思い出させるトラウマであり、同時に絶対的な安心感の象徴でもあった。