ネット上の掲示板やSNSでは、長年にわたり寝食を共にし、国内外のツアーに同行する2人の間柄について「単なる師弟関係なのか」「私生活でのパートナーや夫婦なのではないか」といったゴシップ的な詮索が散見されます。しかし、現場の舞台関係者や取材記者が目撃してきたのは、世俗的な恋愛や夫婦関係という安易な言葉では到底括りきれない、「生命の共同体」とも呼ぶべき特異な関係性です。
その根拠地となっているのが、山梨県北杜市白州町にある農業生産法人「桃花村(とうかそん)」です。田中泯が1980年代半ばから実践している「農耕によって身体を立ち上げ、その身体で踊る」という過酷な生活様式に、石原淋は四半世紀以上にわたって身を投じてきました。朝から日没まで田畑を耕し、大豆や野菜を育て、土の匂いと季節の移ろいを全身に染み込ませた上で、夜や農閑期に稽古場へと向かう日々を送っています。
公の場で見せた表情やインタビューの端々から伝わってくるのは、絶対的な師弟の主従関係というよりも、「同じ過酷な現実を共有する共闘者」としての信頼です。石原淋は田中泯の踊りを最も間近で凝視し、その背中を追いかけながらも、決して模倣に陥ることなく、自らの女性的な肉体と土着の記憶を接続させた独自の表現領域を開拓してきました。