選挙用語において最も誤解されやすいのが「公示(こうじ)」と「告示(こくじ)」の使い分けです。日常会話では同義語のように扱われがちですが、日本の法規上、両者には明確かつ絶対的な境界線が存在します。
公示日とは、国の最高権力機関を決める国政選挙、すなわち衆議院議員総選挙および参議院議員通常選挙において、選挙を行う期日を広く国民に知らせる日のことです。この公示は、日本国憲法第7条第4号に基づき、内閣の「助言と承認」を経て天皇の国事行為として執り行われます。官報に「衆議院議員総選挙を施行する件」といった詔書(しょうしょ)が掲載されることで、法的な効力が発生する仕組みです。
一方で「告示」とは、天皇の国事行為を伴わないすべての選挙で期日を知らせる行為を指します。都道府県知事選、市区町村長選、地方議会議員選挙はもちろんのこと、国政選挙であっても欠員を補充する「補欠選挙」や「再選挙」は、地方公共団体の選挙管理委員会などが決定・通知するため、すべて地方選挙は告示日という名称になります。
公職選挙法第31条から第34条の8にかけて、これらの区分は厳格に規定されており、メディアが報道する際にも「衆院選は公示」「東京都知事選は告示」と完全に言葉を使い分けています。