SNSやQ&Aサイト上では「ハイエースワゴンは普通免許で乗れるから、ミニバンと同じ感覚で誰でも運転できる」という楽観的な意見が散見されますが、現場のプロドライバーや交通鑑識関係者は警鐘を鳴らしています。そこには車両力学上の決定的な盲点が存在するためです。
第一のトラップは、「車両重量の激変による制動距離の伸長」です。ハイエースワゴンの車両単体重量は約2,000kg(2トン)前後ですが、成人10人(平均体重65kgとして計650kg)とそれぞれの旅行バッグ(計150〜200kg)が積み込まれると、総重量は優に2.8トンを超え、法的な普通車上限である3.5トン近くまで達します。
満載状態のハイエースは慣性エネルギーが劇的に増大するため、平時の感覚でブレーキペダルを踏んでも止まりきれません。下り坂でのフェード現象(ブレーキ過熱による効き低下)や、雨天時のハイドロプレーニング現象のリスクが跳ね上がるため、車間距離は普段の乗用車の1.5倍から2倍近く確保する必要があります。
第二のトラップは、「ルームミラーによる後方視界の完全喪失」です。10人乗りハイエースの室内は1列目(2人)、2列目(2人)、3列目(2人)、4列目(4人)というレイアウトになっており、4列すべてに乗客が座ると、標準のアナログルームミラーには乗客の顔や頭しか映りません。最新型に搭載されている「デジタルインナーミラー」装着車でない限り、後方確認は左右のドアミラーだけが頼りとなります。合流地点や車線変更時の死角が極めて大きくなる点には最大の警戒が必要です。