食事の場において「迎え舌」とは、箸やスプーンに乗せた食べ物を口に入れる際、唇を開けて舌を前方に突き出し、舌の上に乗せるようにして迎え入れる一連の動作を指します。本来、正しい食事作法では、食べ物が唇を通過する瞬間まで舌は歯列の内側に収まり、口を閉じた後に舌が食べ物を喉の奥へと送り込みます。しかし迎え舌の人は、まるで舌で食べ物を迎え撃つかのようにペロッと突き出してしまう点が大きな特徴です。
和食の礼法はもちろんのこと、洋食のテーブルマナーにおいても、迎え舌は明確な食事マナー違反と位置付けられています。日本の伝統的な食文化では、咀嚼や嚥下のプロセスを他者に見せないことが奥ゆかしさや配慮の基本とされてきました。料理を受け止めるために舌を大きく露出させる仕草は、動物的な摂食行動を連想させ、同席者に「だらしない」「野蛮だ」という印象を与えてしまいます。
和食の世界には、やってはならない箸の使い方を戒める「嫌い箸一覧」(ねぶり箸、寄せ箸、刺し箸、迷い箸など)が存在しますが、現代の会食シーンでは、これらの箸マナーと同等、あるいはそれ以上に「迎え舌」が厳しく糾弾される傾向にあります。器や道具の使い方にとどまらず、身体の露出部分である口腔内の粘膜を不用意にさらけ出す行為そのものが、同席者の食欲を著しく削ぐ要因となるからです。