日本のビジネスシーンや大衆文化で定着している「サクラ(おとり客、劇場のやらせ動員、偽装レビュー投稿者)」という隠語。この感覚のまま韓国で「저 사람은 벚꽃이에요(あの人は桜です)」などと口にしても、相手は何を言われているのか一切理解できません。韓国語において、植物の桜に人を騙す・煽動するという裏の意味は1ミリも付与されていないからです。
では、韓国社会で「おとりのサクラ」に該当する事象はどう呼ばれているのでしょうか。実態を反映するリアルな韓国語表現は、場面ごとに以下のように厳密に使い分けられています。
おとりを指す韓国語の筆頭格である「바람잡이(パラムジャビ)」は、元来「風(바람)を巻き起こして周囲の群衆の関心を操る人物」を指す表現です。祭りや市場の露店で買い物のフリをして歓声を上げ、一般客の財布の紐を緩めさせる人物を的確に描写しています。
一方で、韓国の現代カルチャーにおける「桜」のスラングといえば、2012年にリリースされたBusker Busker(バスカー・バスカー)の名曲『벚꽃엔딩(桜エンディング)』に端を発する「벚꽃좀비(桜ゾンビ)」や「벚꽃연금(桜年金)」が圧倒的な知名度を誇ります。毎年3月下旬になると、まるでゾンビが土の中から這い出るかのように音源チャートの上位を独占し、作詞作曲者に巨額の印税をもたらし続ける現象をユーモラスに表現したものであり、ネガティブな詐術とは無縁の愛されスラングです。