精神科や心療内科の臨床現場では、知能検査の結果と日常生活の適応度を組み合わせて総合的な判断を下します。なかでも世界的に標準とされているのが、成人知能検査であるWAIS-IV知能検査の基準値です。
一般に知能指数(IQ)の平均値は100と定義され、85〜115の間に全人口の約68%が収まります。これに対し、境界知能との違いと診断基準を整理すると、単なる数値の上下だけではない複雑なグラデーションが存在します。
医学的診断においては、数値のみで機械的に判定されるわけではありません。最新の診断基準(DSM-5-TRやICD-11)では、「概念的領域」「社会的領域」「実用的一般生活領域」という3つの適応機能における制約が重視されます。仮にIQが68であっても、一人で自立した生計を立てていれば診断が保留されることもあれば、IQが72前後であっても生活機能の崩壊が著しい場合は精神障害者保健福祉手帳の取得や自立支援制度の適用が模索されます。
WAIS-IVでは、「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリ」「処理速度」という4つの指標のバラつき(ディスクレパンシー)が測定されます。大人の女性では、言語理解が比較的高く保たれているために知能の遅れが覆い隠され、ワーキングメモリや処理速度の低さによって実務で躓くケースが目立ちます。