読者の間で最大の関心事であり続けているのが、リコの母である「殲滅卿ライザは今も生きているのか」という問題です。深界四層で発見された彼女の墓標、そして地上に届けられた白笛と「奈落の底で待つ」と書かれたトコシエコウの封書。これらを根拠に「ライザは既に死亡しているのではないか」という仮説が長年囁かれてきました。
しかし、監視基地のオーゼンが墓を暴いた際、「中身は空っぽであり、遺体は埋葬されていなかった」という決定的な証言が残されています。また、原作者のつくしあきひと氏が各媒体のインタビュー等で語るアビスの基本概念に照らし合わせても、ライザの死を断定する客観的証拠は一切示されていません。
深界六層以降では「時間の流れが地上と大幅に狂う」というタイムダイレーション(時間遅延)の現象が確認されています。リコたちが地上で過ごした十数年間は、深界六層・七層にいるライザにとってはわずか数年、あるいは数ヶ月足らずの体感時間である可能性が極めて濃厚です。したがって、「すでに寿命で尽きている」という見方はアビスの物理構造上否定されます。彼女がラストダイブの果てに何を目撃し、なぜ白笛を地上へ送り返したのか——その真相こそが、物語のクライマックスに直結する最大の伏線となっています。