胃もたれや激しい下痢に見舞われた際、多くの人が手に取る「ヨーグルト」「スポーツドリンク」「雑穀米」「柑橘類」。これらは健康な日常においては極めて優秀な食品ですが、粘膜が炎症を起こしている胃腸にとっては凶器に変わり得ます。臨床現場の消化器専門医が警鐘を鳴らすのは、「胃腸の休息(ガストリック・レスト)」と「健康食の摂取」を混同してしまう認識のズレです。
代表的な誤解がヨーグルトや乳酸菌飲料です。ウイルス性胃腸炎などで小腸粘膜の微絨毛が破壊されると、乳糖を分解する酵素「ラクターゼ」の分泌が一時的に激減します。この状態で乳製品を摂取すると、分解されなかった乳糖が腸管内で高濃度のまま残り、浸透圧によって腸壁から水分を引き寄せて浸透圧性下痢を誘発します。善玉菌を補うつもりが、下痢を泥沼化させる原因になるのです。
さらに見落とされがちなのが、いわゆる市販スポーツドリンクの浸透圧です。糖濃度が8〜10%に達する高浸透圧(ハイパートニック)飲料をそのまま飲むと、腸管からの水分吸収が遅延するだけでなく、脱水状態の腸腔内へ水分が逆流しかねません。急性胃腸炎や嘔吐・下痢が続く局面では、市販の清涼飲料水ではなく、WHO(世界保健機関)の基準に準拠した胃腸風邪 水分補給と経口補水液(経口補水療法:ORT)を最優先しなければなりません。
また、お腹を下した時のNG食材として筆頭に挙がるのが「不溶性食物繊維」です。ごぼう、玄米、さつまいも、きのこ類に含まれる不溶性食物繊維は、水分を吸収して便のかさを増やし腸壁を機械的に刺激します。便秘解消には効果的ですが、炎症を起こして痙攣している腸管にとっては、傷口をヤスリでこするような刺激となります。良かれと思って選んだ玄米がゆや野菜たっぷりの味噌汁が、激しい腹痛の引き金になる理由はここにあります。