本作のミステリーの核心に位置するのが、ジョンスノウの正体とその理由です。物語の冒頭から「エダード・スタークが戦地で作った私生児」として不当な扱いを受けてきた彼ですが、その出自には七王国の歴史を覆す重大な密約が隠されていました。
ブランの千里眼によって暴かれた真実は、ファンの間で長年「R+L=J」と囁かれてきた仮説の通り、ジョンスノウの実の父親がレイガー・ターガリエン王子であり、母親がネッドの妹リアナ・スタークであったという事実です。狂王エリス二世の皇太子レイガーとリアナは密かに正当な婚姻を結んでおり、ジョンスノウの真の名はエイゴン・ターガリエンでした。つまり彼は私生児どころか、ターガリエン王家の第一位王位継承権を持つ正統な血統だったのです。
ネッド・スタークが親友であるロバート王や最愛の妻キャトリンにすら真実を隠し、自らの名誉を汚してまで彼を「私生児」と偽り続けた理由は、ロバート王によるターガリエンの血筋根絶の粛清から幼い甥の命を守るためでした。妹リアナが死に際に託した「約束して、ネッド」という誓いを、彼は墓場まで持っていく覚悟で貫いたのです。
この血脈の開示は、デナーリスとの関係を「女王と部下」から「叔母と甥」という近親関係へと変貌させ、デナーリスの王位継承の正当性を根本から揺るがしました。民衆から自然に愛されるジョンスノウへの嫉妬と疎外感が、デナーリスを「狂気」へと加速させた心理的要因の一つとなっています。
さらに、この血統の重要性は前日譚ドラマ『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』の相関図とも直結しています。約200年前のターガリエン内乱(双竜の舞)の時代から代々受け継がれてきた「氷と炎の歌」というエイゴン征服王の予言――北方の脅威に立ち向かうためにターガリエンの血が必要であるという予言を体現したのが、まさに氷(スターク)と炎(ターガリエン)の双方の血を引くジョンスノウだったのです。