インターネット上のレシピ動画や掲示板では、「牛すじを煮た茹で汁は油と臭みの塊だから全て流しに捨てるべき」という言説が散見されます。しかし、これは半分正解で半分は大きな誤解です。
確かに、ステップ1の「最初の茹でこぼし汁(5分間沸騰させた煮汁)」は過酸化脂質と血液が凝縮しているため、完全に廃棄しなければなりません。しかし、汚れを綺麗に洗い落とした後、生姜や酒とともにじっくり煮出した「第2次下茹でのスープ」は、純度の高いゼラチンとアミノ酸が溶け込んだ最高級の牛骨出汁に匹敵します。
この旨味エキスを安全かつヘルシーに再利用するための技法が、茹で汁の油取りと活用法です。煮上がったスープをそのまま使うと脂分が多すぎるため、粗熱を取った後にボウルへ移し、冷蔵庫で一晩(約6時間以上)しっかり冷却します。すると、純白の硬い牛脂(ラード)がスープの表面にまるでフタのように一枚の板となって完全に固まります。これをスプーンでペリペリと剥がし取るだけで、脂質ゼロに近い、黄金色のプルプルとした煮凝り状のスープが完成します。
このスープをベースにして牛すじ煮込みを仕上げれば、格段のコクと奥行きが生まれます。また、余ったスープはカレーの水分、テールスープ風のワカメスープ、あるいはうどんの出汁として活用することで、市販のブイヨンでは到底出せない奥深い味わいを手軽に家庭で再現できます。
また、近年急速に普及している炊飯器での下処理手順にも注意すべき盲点が存在します。内釜に牛すじと水を入れ、「炊飯ボタン」を押すだけで手軽に下茹でができる反面、牛すじ特有の脂と泡が激しく吹き上がり、内蓋の調圧弁や蒸気口を油脂で塞いでしまう事故事例が報告されています。炊飯器を活用する場合は、必ず「最大炊飯容量の半分以下の水分量に抑える」「落とし蓋としてクッキングシートを密着させて敷く」という安全策を徹底してください。