英朋の名声を不動のものにしたのが、文豪・泉鏡花の小説に寄せた木版口絵です。『婦系図』『続風流線』など、鏡花が紡ぐ幻想的かつ情念に満ちた世界を、英朋は繊細極まりない筆致で視覚化しました。鏡花自身も英朋の画境を深く信頼し、二人のタッグは読者を熱狂させました。
また、英朋の真骨頂ともいえるジャンルが「幽霊画」です。代表作として知られる『蚊帳の前の幽霊』などに見られる表現は、ただおどろおどろしいだけではありません。現世に残した未練や哀愁を漂わせる幽玄な美しさをたたえており、見る者の心に深く刺さる叙情性を放っています。憂いを帯びた瞳、儚げな表情、生々しいまでの気品――それらが同居する英朋の美人画・幽霊画は、時代を超えて人々を惹きつけてやみません。