ネット上の考察コミュニティやSNSでは、本作に関して長らく囁かれている奇妙な噂が存在します。「異常なハイテンションの裏で、実は狂気に満ちたディストピアが描かれているのではないか」「甘いお菓子で子どもたちを誘い込み、二度と出られない世界に閉じ込める洗脳ソングなのではないか」という、いわゆる裏設定の疑惑です。
こうした憶測が生まれた背景には、ボカロシーンにおいて「明るい曲調にグロテスクな歌詞を忍ばせる」という手法が一大ジャンルとして定着してきた歴史があります。極彩色のポップさが行き過ぎるあまり、一部のリスナーが「過剰な笑顔の奥にある不穏さ」を連想し、心理的な認知的不協和を起こしたことが発端でした。
しかし、当時のインタビュー記事やキノシタ氏本人の創作意図を綿密に調査すると、そうしたオカルト的な裏設定は事実無根のファンの二次創作的な深読みであることが明確になります。作者自身が一貫して追求しているのは、「聴いた瞬間に日常の憂鬱をすべて吹き飛ばす、混じり気なしの純度100%の元気とエネルギー」です。
「裏の意味があるはずだ」と邪推させてしまうほどに研ぎ澄まされたハイパー・ポジティブ表現こそが、本作の真の驚異と言えます。影がないからこそ、光が強すぎて人間が本能的に警戒心を抱いてしまうという、現代のサブカルチャー受容における興味深い逆転現象がここに生じています。