弔事マナーを巡る情報の中には、時代錯誤な俗説や根拠のない誤解が今なおネット上に溢れています。特に注意すべき2つの盲点を検証します。
誤解1:「不祝儀袋でアラビア数字を使うのは無作法であり、受け取りを拒否される」
一部の極端なマナー解説サイトでは、「香典でアラビア数字を使うと神仏に対して失礼になる」といった言説が見受けられます。しかし、これは明確な誤りです。
そもそも香典の中袋は「会計袋」であり、神仏に捧げる供物そのものではなく、施主(遺族)が金銭を管理するための道具です。仏教、神道、キリスト教のどの宗派においても、中袋の数字表記に教義上の制約はありません。寺院や神社に納める「御布施」や「初穂料」であれば格式を重んじて縦書きの大字を用いるのが好ましいものの、一般の参列者が持参する香典中袋において、横書き算用数字が非礼に当たることは一切ありません。
誤解2:「新札を入れてはいけないから、わざとボロボロのしわくちゃなお札を入れる」
「新札はあらかじめ死を予期して準備していたようで失礼になる」という古くからの戒めは有名です。しかし、これを曲解して手垢で汚れたお札や、破れかけた紙幣を包むのはかえって故人への敬意を欠きます。
現代の実務において、手元に新札(ピン札)しかない場合は、お札の中央を一度だけ軽く手で折って折り目をつけてから包むのがスマートな解決策です。また、お札の向きについても注意が必要で、中袋の表側(金額を書いた側)に対して、お札の人物の肖像画が「裏面・下側」に位置するように揃えて入れるのが、悲しみに顔を伏せる意味を込めた伝統的な作法とされています。