骨延長の歴史は、1950年代に旧ソ連の医師ガブリル・イリザロフが開発したイリザロフ法から始まりました。これは脚の皮膚の上から多数の鋼線を骨へ貫通させ、リング状の金属フレーム(創外固定器)で固定しながらネジを回して牽引する方法です。確実な固定力を持つ半面、皮膚を貫いたピンホールから細菌が侵入するピン感染のリスクが極めて高く、外装器具が衣服や日常生活を著しく妨げるデメリットがありました。
その後、髄内釘(骨の中に挿入する金属棒)と創外固定を併用するLON法などを経て、2010年代以降に普及したのがプリサイス法(Precice法)をはじめとする完全体内埋め込み型の髄内釘システムです。骨の内部に特殊な磁気モーターを内蔵した金属ロッドを埋め込み、体外から専用のリモコン装置(ERC)を当てることで内部のギアを磁力で回転させ、皮膚を切開することなく骨を内部からミリ単位で伸長させます。感染リスクが劇的に低減し、外観上の負担も大幅に軽減されたものの、機器自体が極めて高価であり、高度な手術技術が求められます。
日本国内において、軟骨無形成症などの先天性疾患や外傷に伴う脚長差(目安として2.5cm以上などの疾患基準)に対する低身長治療整形外科での手術には健康保険が適用されます。しかし、審美的な目的で低身長を改善したいというケースでは公的医療保険は一切適用されず、全額自己負担の自由診療となります。国内で完全体内埋め込み法を受ける場合、術前検査から入院費、器具抜去手術まで含めると総額で1,500万円から2,500万円超という莫大な費用が必要です。