インターネット上の掲示板などでは、「電源ボタンを長押ししたらマザーボードがショートして即死した」「一発でハードディスクが物理破壊される」といった過度な恐怖論言説が散見されます。しかし、ハードウェア工学の観点から言えば、この言説には明確な誤解が含まれています。
現代のPC(特にNVMe SSD搭載機)において、電源ボタン長押し(ACPIによる強制電源断)によってパーツが物理的に焼き切れるような故障は、極めて稀です。本当に恐れるべきパソコンの強制終了リスクの本質は、ハードウェアではなく「ファイルシステムと論理構造の破壊」にあります。
Windowsは更新中、重要なマスターブートレコード(MBR/GPT)やレジストリハイブの書き換えを連続的に行っています。そのトランザクションの真っ只中に電力を強制遮断されると、データが中途半端な状態で分断され、次回起動時にファイルシステムが辻褄を合わせられなくなります。結果としてブルースクリーン(BSoD)が発生したり、修復不可能な起動ループに陥るのです。つまり、「壊れるのは基板ではなく、OSの頭脳(データ整合性)」であるという事実を正しく認識しなければなりません。