画面上では完璧なロマンチシズムを見せる中村倫也ですが、本人が過去の特別番組やトークショー、自著のエッセイなどで明かした舞台裏は、極めて職人的かつユニークな視点に満ちています。
報道各社の取材データや当時のインタビューによると、ラブシーンの撮影前について彼は「段取りをガチガチに固めすぎない」ことを意識していると語っています。動きをシミュレーションしすぎると芝居から生々しい感情が抜け落ちてしまうため、現場の空気感や照明の位置、相手の呼吸に合わせてアドリブ的に微調整を加えているというのです。
また、相手役に対する細やかなジェントルマンシップも有名です。『恋あた』の現場では、当時まだラブストーリーの経験が少なかった森七菜が緊張しないよう、撮影直前まで他愛のない雑談で場を和ませていたと報じられています。本番に入った瞬間に冷徹な社長から恋する男の目へと一変するプロフェッショナリズムに、共演者のみならず現場のカメラマンや照明技師までもが息を呑んだといいます。
さらに、かつてバラエティ番組で「キスの最中に何を考えているか」を問われた際には、「カメラの影にならない位置」「相手の表情が照明で綺麗に抜ける角度」を頭の片隅で冷静に計算していると明かし、共演者を驚かせたこともありました。情熱的に見せながら、頭の半分は極めて冷徹な映画職人。この熱さと冷静さの絶妙な二重構造こそが、名シーンを量産できる最大の理由です。