社会的割引率4%見直しの真相!将来世代と公共事業を変える新基準

社会的割引率4%見直しの真相!将来世代と公共事業を変える新基準

社会的割引率4%見直しの真相!将来世代と公共事業を変える新基準を徹底追究! 読者が気になる 情報と解説を凝縮して配信します。

社会的割引率の議論を世界的な政治闘争に押し上げた発火点は、元世界銀行チーフエコノミストのニコラス・スターン卿が2006年に発表した気候変動スターンレビューでした。スターン卿は、社会的割引率を約1.4%という異例の低水準に設定し、「今すぐ世界GDPの1%規模の対策を講じなければ、将来的に世界GDPの5%から20%に達する壊滅的打撃を被る」と警鐘を鳴らしました。

当時、米国の著名経済学者ウィリアム・ノードハウスらは「割引率が低すぎて非現実的だ」と猛反発しました。しかし、地球沸騰化が現実の脅威となった2020年代以降、スターン卿の問題意識は完全に再評価されています。排出された温室効果ガスがもたらす長期的な被害総額を金額換算した炭素の社会的費用(Social Cost of Carbon: SCC)を試算する場合、割引率を4%に設定すると、100年後の壊滅的な海面上昇や干ばつの被害が計算上で「取るに足らない小額」へとすり替えられてしまうからです。

近年では、現在世代の都合を優先する「資本の社会的機会費用」から、社会全体が将来の消費や生存基盤をどれだけ重視するかを示す社会的時間選好率(STPR)への軸足シフトが定着しつつあります。将来世代の負担評価において、世代間の心理的バウンダリー(境界線)を都合よく引き、「未来のコストを現在価値で希釈してツケを回す」という手法は、倫理的にも経済学的にももはや許容されなくなっています。

中村 さくら
著者

中村 さくら

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。