デジタル大辞泉をはじめとする主要な国語辞典において、「足を延ばす」には大きく分けて2つの語義が収録されています。第1の意味は「いま来ている所より、さらに遠くまで行くこと」、そして第2の意味は「楽な姿勢になってくつろぐこと」です。現代の日本語運用において圧倒的な頻度で用いられるのは前者であり、予定していた移動距離をさらに先に押し広げる動作を指します。
慣用句の語源を紐解くと、古来より日本語における「足」は単なる人体の一器官にとどまらず、「歩行能力」「移動の歩みそのもの」を象徴する言葉として機能してきました。旅の途上において、予定していた宿場町や目的地にとどまらず、もう一里、もう二里と歩みを先へ進める行為を、歩行の歩幅や行程を先へ引き延ばすイメージに重ね合わせたことがこの表現の成り立ちです。
具体的な旅行や出張での使用例としては、次のようなシチュエーションが典型です。
「金沢での観光を終えた後、能登半島の温泉街まで足を延ばした」
「福岡への出張のついでに、足を延ばして佐賀の支社を視察してきた」
このように、「基準となる滞在地点が存在し、そこを出発点として追加的な移動を行う」という二段構えの行程が存在することが、「足を延ばす」という言葉が持つ構造的な特徴です。