高張性脱水が別名水分欠乏型脱水と呼ばれる理由は、失われる体液のバランスにあります。人体を構成する体液は、細胞膜を境に「細胞内液」と「細胞外液(血漿や間質液)」に分かれており、正常時には浸透圧が約285〜295mOsm/Lの等張状態に保たれています。しかし、何らかの要因で電解質(主にナトリウム)の喪失を大幅に上回るスピードで純粋な「水」だけが失われると、細胞外液の浸透圧が跳ね上がります。
浸透圧の原理に従い、水分は「浸透圧の低い場所から高い場所」へと移動します。その結果、高浸透圧となった血管や間質へ向かって細胞の中から水分が猛烈な勢いで吸い出され、細胞そのものが縮小・萎縮するという致命的なプロセスが始動します。体内の水分の約3分の2は細胞内液に存在するため、水分欠乏型脱水では全身の細胞機能がダイレクトに破壊されることになります。
発症を引き起こす主因には、自発的な水分摂取が困難な状態(意識障害、認知症、自力で動けない環境)、高度の発熱や熱中症に伴う過剰な発汗、気管切開や過換気による不感蒸泄の増大が挙げられます。さらに臨床現場で頻繁に遭遇するのが、高浸透圧高血糖症候群(HHS)や糖尿病ケトアシドーシス(DKA)に伴う浸透圧利尿です。尿中に大量の糖が漏出することで浸透圧勾配が生じ、腎臓の再吸収限界を超えて水分が強制的に尿として体外へ排出され、加速度的に高張性脱水が進行します。