ベル麻痺の場合、早期に適切な治療を受ければ約70〜80%の患者がほぼ後遺症なく完治します。しかし、ラムゼイ・ハント症候群の場合は完全治癒率が50〜60%程度に留まり、残りの患者には何らかの後遺症が残るのが現実です。
代表的な後遺症として知られるのが「病的共同運動」です。これは、目を閉じようとすると口角が一緒に上がってしまったり、食事で口を動かすと勝手に涙が出てきたり(ワニの涙症候群)する現象です。神経が再生する過程で、誤った筋肉へ神経線維が繋ぎ替わってしまうことが原因です。
こうした深刻な事態を避けるためには、わずかな予兆を見逃さず、即座に耳鼻咽喉科や脳神経内科を受診することが不可欠です。以下に挙げるセルフチェック項目で、1つでも当てはまるものがあれば警戒が必要です。
【顔面麻痺の初期症状セルフチェック】
・朝起きてうがいをすると、片側の口元から水がこぼれる
・片方の目が完全に閉じにくく、洗顔時に目に石鹸がしみる
・ストローで飲み物を吸おうとしても、うまく口に力が入らない
・鏡を見ると、笑顔を作ったときに片方の口角が上がらない
・食事の際、舌の片側で味(甘み・塩気など)を感じにくい
・耳の奥や後頭部にズキズキとした鈍痛がある、または小さな水疱ができている
・日常の物音が異常に大きく響いて聞こえる
脳卒中などの脳血管障害による中枢性麻痺との鑑別も極めて重要です。「おでこのシワ寄せができるかどうか(できる場合は脳疾患の疑いが高まる)」など、医師による迅速な画像診断と神経学的検査が生死と予後を分ける防波堤となります。