ボーカルを担当する「初音ミク」の存在も、この楽曲の恐怖を増幅させる決定的な要素だ。クリプトン・フューチャー・メディアが生み出したシンガーソングソフトウェアである彼女は、人間の感情を超越した無機質さと、圧倒的な調律の柔軟性を兼ね備えている。
きくおは、初音ミクの歌声に緻密なピッチベンドとエフェクト処理を施した。まるで喉をつぶしながら絞り出されるような声色、感情が破綻していく過呼吸のような息遣い。人間が歌えばあざとくなりがちな激しい愛憎を、VOCALOID特有の冷徹なデジタルサウンドが中和し、同時に浮世離れした不気味さを際立たせている。