本作は、第6回本格ミステリ大賞の候補に挙がった際も、選考委員や批評家の間で激しい議論を呼んだ。あまりに倫理のタガが外れたストーリー展開と、解決編で提示される読後感の「悪さ」――いわゆる「イヤミス」の先駆けとも言える作風は、従来の本格ミステリの枠組みに揺さぶりをかけた。
著者である道尾秀介は、人間の脆弱さや歪んだ愛、哀しい狂気を描くことに定評があるが、その原点にして最も鋭利な刃物のような作品が本作だ。出版業界においては、「絶対に人に勧められないが、一生忘れられない本」として口コミが広がり、SNS時代を経てもなおその異彩を放ち続けている。