北海道・十勝の帯広市を本拠地とする2大製菓メーカーとして、全国の観光客が必ず比較するのが「六花亭」と「柳月」です。同じ地域で同時期(六花亭の前身・帯広千秋庵は1933年、柳月は1947年)に創業し、豊かな酪農地帯の恵みを活かしてきた両社ですが、その企業姿勢と商品開発の思想には明確な違いが存在します。
六花亭は、坂本直行が描いた草花柄の包装紙に象徴されるように、文学やアート、サロン文化を重んじる「情緒的・文化的なブランド構築」を推進してきました。代表作「マルセイバターサンド」をはじめ、パッケージの美しさや記念館の運営など、北海道の自然美を洗練された形で消費者に届ける戦略をとっています。
対する柳月は、どこまでも「家庭の団らんに寄り添う親しみやすさと職人技の融合」を貫いています。十勝の開拓史を色濃く反映した「三方六」や、昭和レトロを思わせる「あんバタサン」のデザインからも伝わる通り、気取らない温かみと高いコストパフォーマンスが最大の特徴です。六花亭のマルセイバターサンドがラムレーズンを効かせた大人の洋風リッチ路線であるのに対し、柳月のあんバタサンは十勝の誇る「小豆あん」を主役に据え、和菓子と洋菓子の架け橋となるアプローチを展開しています。どちらが優れているかではなく、上品な文化性を贈りたいときは六花亭、北海道の親しみやすさと素材の直球勝負を楽しみたいときは柳月という明確な住み分けが成立しています。