長年、高知市本町の一角で威容を誇っていた「四国電力高知ビル」の解体と機能移転は、街の景観を一変させました。地元住民の間では「なぜ中心部から移転したのか」「建物を解体してどうするのか」といった疑問が多く投げかけられました。
関係機関の公開情報およびインフラ強靭化計画の取材から浮かび上がった四国電力高知支店移転理由の本質は、高度経済成長期に建てられた旧社屋の老朽化に加え、高知県が直面する最大のリスクである南海トラフ巨大地震へのBCP(事業継続計画)強化です。旧高知ビルが立地していた本町周辺は、大規模津波発生時の浸水想定区域に近接しており、ひとたび被災すれば高知県全域の電力制御・復旧指揮を執る司令塔機能が麻痺する危険性を孕んでいました。
この壊滅的リスクを回避するため、四国電力および四国電力送配電は、支店機能および給電指令機能の耐震・浸水対策を施した安全な拠点への分散・再配置を進めました。旧ビルは耐震性能の限界と維持コストの肥大化に伴い解体建て替えプロジェクトの対象となり、県民のライフラインを守る危機管理体制の抜本的刷新が行われたのです。単なるオフィスの統廃合ではなく、大規模災害時に電力網を死守するための必然的な決断であったといえます。