今日、『はだしのゲン』は日本国内にとどまらず、世界数十カ国で翻訳され、最高峰の反戦文学として国際的な評価を確立している。海外のグラフィックノベル市場でも、戦争のリアルを告発する歴史漫画として高く評価されてきた。漫画というメディアが持つ表現力の高さを世界に示し、のちの表現者たちに多大な影響を与えたことは疑いようがない。
一方で、現在の出版業界や漫画業界は、コンプライアンスやレーティングの波の中で難しい舵取りを迫られている。自主規制の強まりによって、過激な歴史的・社会的テーマを扱う作品の発行や流通が難しくなる懸念だ。古典的名作を現代のコンプライアンス基準だけで裁き、排除してしまうことに対する危機感は、多くのクリエイターや編集者の間で共有されている。