映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』において、物語のクライマックスを決定づける重要な役柄が、二階堂ふみ演じる山崎富栄です。富栄は実在した人物であり、戦後間もない東京で美容師として自立して働きながらも、妻子ある太宰治と出会い、その運命を大きく狂わせていくことになります。
本作には、太宰を支える3人の女性たちが登場します。家庭と子どもを守り抜く凛とした正妻・津島美知子を宮沢りえが、太宰の子を宿し文学のミューズとなった貴族的な愛人・太田静子を沢尻エリカがそれぞれ熱演しました。この2人が「太宰に生を与え、書かせる力」を持っていたのに対し、二階堂ふみ演じる山崎富栄は唯一「太宰を死へと引きずり込む力」を持った女性として対比的に描かれています。
最初は太宰のファンとして控えめに接していた富栄が、逢瀬を重ねるごとに「私だけを見てほしい」「いっそ2人で死んでしまいたい」という狂気じみた情念へと変化していく様は圧巻です。二階堂ふみは、戦後の混乱期に生きた一人の女性の孤独と、すべてを投げ打って愛に殉じようとする危うさを、息をのむようなリアリティで表現し切りました。