穏やかな湖面と有珠山・昭和新山の荒々しい山容が対照的なコントラストを描く洞爺湖畔。この地に「とうや湖ぐるっと彫刻公園」が整備された契機は、1990年代初頭に遡ります。当時の虻田町・洞爺村(現・洞爺湖町)および壮瞥町が連携し、北海道の大自然と調和した文化的景観を創出する目的で立ち上げられた「人と自然がふれあう野外彫刻公園構想」がその発端です。
設置事業が進められたのは1991年から1994年にかけてのバブル経済終焉期。莫大な開発資金が公共事業へ投じられた時代背景の中、国内外から著名な現代彫刻家が招聘されました。美唄市出身の世界的彫刻家・安田侃をはじめ、イタリアの現代美術を代表するイゴール・ミトライ、重村三雄、速水史朗など、錚々たる作家たちが洞爺湖という特異なカルデラ地形のために作品を制作・配置した事実は、現在のパブリックアート施策と比較しても突出したスケール感を誇ります。
設置から30余年を経た現在、作品群は風雨や降雪、湖からの湿気といった過酷な自然環境に晒されながらも、独自の経年変化を刻み込んできました。ブロンズの緑青や石材に生えた地衣類が、湖畔の木々や水辺の生態系と調和し、完成当初の人工的なモニュメントから「風景の一部」へと昇華したことが、文化・芸術に造詣の深い旅行層を強く惹きつける要因となっています。